躊躇する訳

異物感

考える年配の女性

口内に装着するので完全体ではない部分入れ歯でも異物感を感じさせるには充分で、慣れるまでの違和感はコンタクトレンズに匹敵するのではないでしょうか。 眼鏡からコンタクトレンズに移行した方ならわかるでしょうが、初コンタクトで思い知らされる異物感は並大抵のものではありません。 「何か入ってる、何か入ってる」と常に意識が眼球に向かってしまい、集中して作業をすることはとてもじゃありませんが3秒が限界で、瞑想が日課のような心穏やかな人でも頑張ってせいぜい10秒でギブアップです。言葉にして言い表わそうとしてもよく分からなくて伝わりにくいでしょうが、とにかく凄い異物感を口内で発し続けることになります。義歯にもいろいろありインプラントや差し歯、ブリッジはそこまでに大きな異物感はありませんが、入れ歯だけは別格なのです。インプラントや差し歯は施術が完了すればすぐに自分の元の歯のような感覚で使用できますし、ブリッジで使われる金属はほんの微量ですぐに馴染むことができます。ですが入れ歯は義歯にかかる力を均等に分散して歯茎を傷めないような構造になるので、サイズも必然的に大きくなってしまうのです。この異物感については事前に歯科医師から説明されるでしょうが、そこで怖気づいて「やっぱり今日はやめとこうかな」「日を改めて考え直そう」「しばらくはビー玉でも口内にずっと入れておいて舐めまくって違和感に慣れる練習をしてからまた今度天気のいい日に晴れた空を眺めながら決心しよう」と即決することを避けてしまう人が多いと思われますので、歯医者さんに行った時に入れ歯間近っぽい他の患者さんの様子をこっそり伺ってみるものまた一興かもしれません。

取り扱いが大変

自分の健康な歯ならメンテナンスは基本的に歯磨きだけとなりますので、食後や寝起き、就寝前に歯ブラシを握る癖さえつけておけばなんの苦もなく良い状態を保つことがとっても簡単に実行可能となります。わざわざ口内から取り外して磨く必要もなければ寝る前に特別な処置を施す必要もなく、幼少の頃から欠かさず行ってきた歯磨きだけで日常のメンテナンスは完了です。お風呂に入って髪を洗う、爪が伸びてきたから切る、それと同程度の手間で健康な歯をそのまま現状維持させることが出来るでしょう。ですが入れ歯のメンテナンスはそこまで簡単ではありません。ゴハンを食べていて何かが歯の隙間に挟まることはよくありますが、みんなのように爪楊枝を口の中に突っ込んで取り除くのはよくありませんので入れ歯を一旦外に出して挟まった物を清掃しなければなりません。口の中に入れたまま多くの人が歯を磨くように入れ歯を歯ブラシで磨くこともダメで、寝る前に洗浄液になどに漬けて清潔さを維持することになります。とにかくそれまでは一度もしたことのない工程で義歯をメンテナンスしなければならず、そのお手入れに不安を感じる人も結構いるのです。入れ歯を使い始めるということは最初に高額な投資をするわけですから、その金額分はよい働きをしてもらわなければ割に合いません。ですがお手入れをサボってすぐにボロボロになってしまったら、高いお金を払って手に入れた便利アイテムが無価値なものになってしまいます。そこを不安に思い入れ歯を躊躇する人もいるのです。

違和感どころか痛み

自分が使い始める前に経験者にお話を伺うということはよくあることですが、そこで入れ歯が痛く感じるという体験談を聞かされるともう恐くなってしまい、「やっぱり自分には向いていないようだな」「痛い思いをするのは嫌だ」「先に痛みに慣れる特訓をしたほうがよさそうだししばらくは小石でも口の中に入れて入れ歯対策をして迎え入れる準備をしよう」「硬いものを食べられないのと痛みに耐えるのどっちがいいか迷ってしまうけど、今自分が置かれた状況を冷静に分析すると痛いのは困る、毎日のオカズを豆腐や冷奴にしてスルメと白米の食生活を改善させるいい機会だ」と逃げの考え方をして結局は入れ歯デビューを先延ばしにしてしまいます。確かに経験者の中には痛みを伴うと語る人もいますが、全ての入れ歯が痛いわけではなくむしろ正しく使っているほとんどの人はその苦しみを体験していません。痛い思いをするのは入れ歯の形状が良くなかったり噛み合わせが正確でないからで、自分にピッタリの入れ歯を正しく装着していればそんなに苦しい思いをすることはまずありえないことなので心配しなくても平気です。形状が自分に適していない場合入れ歯を支える歯茎にかかる負担が均一ではなく偏ってしまうため、強く噛めば噛むほど強烈な痛みを発生させてしまい食事の時間が憂鬱になるでしょう。その悪夢のような体験をした人が入れ歯は痛いんだと後輩に言い伝えるので、正しい知識を持たぬデビュー前の入れ歯予備軍はビビッてしまうのです。入れ歯は痛いというのは誤った使い方をしたりサイズが合わない場合のことで、そこさえ間違わなければいたい思いをするものではありません。